CITRON.

のん気で内気で移り気で。

女子高生のトップ・シークレット。

女子高の学園祭に行く。
といっても、娘の部活の発表を見に行くというだけの話なのだが、一応、髭をきれいに剃り、髪も切った。あまりにも不審者っぽい身なりで行って、娘に迷惑をかけるわけにはいかない。

学園祭に行く楽しみはもうひとつあって、図書室で図書委員会主催の古本市があるのだ。
廃棄対象の本を、本の大きさ定価に関わらず1冊10円で売るという太っ腹企画である。これはある意味偏見なのかもしれないが、女子高なのにハヤカワのSF文庫があったりして、自分が高校生だった頃になんとなく興味はあったもののずっと読んだことがなかったハインラインを数冊まとめて買ったりした。
バッグいっぱい本を買っても100円玉2枚でお釣りがくる。娘が卒業しても、できれば毎年ここには来たいくらいだ。
ただしその後、重たいバッグを抱えて校内をウロウロすることにはなるのだが。

娘たちの発表は想像以上に素晴らしく、「ぶーぶー文句を言いながらでも、地道に練習すれば上手になるもんだなあ」という、ある意味当たり前のことを頭ではなく体で理解したような気がする。けっこう感動してしまい、思わず涙ぐんでしまったのは加齢のせいだけでもないだろう。

例年、発表が終わった後は静かに退席するのだが、今回はついつい後かたずけをしている娘に声をかけてしまった。静かな気持ちでいられなかったのである。
二言三言言葉を交わし、他の部員のもとへ戻る背中をなんとなく見送る。娘のそばに寄ってきた子がこちらをちらりと見て「あれ、お父さん?」と言っているのが聞こえてくる。
僕の聞き間違えでなければ、娘はこう答えたはずだ。

「うん、そう。……とうとう見られちまったか」

どういう風に受け取っていいのかわからない、実に味のあるセリフだと思う。