CITRON.

のん気で内気で移り気で。

スイングしなきゃ意味ないね。

くるりが『ワールズエンド・スーパーノヴァ』の演奏をはじめた時。
電気グルーヴのステージから『Fallin' Down』のイントロが聴こえてきた時。
のんの口から、『タイムマシンにおねがい』の歌詞がこぼれ出た時。

背筋をぞくぞくとするような電流が流れ、僕はつい、「わあ」と言ってしまったのであった。
大人にしてはずいぶんと無防備に。恥ずかしいくらいに素の声で。
あわてて口を押えてみたが、まわりのお客さんには聞こえてしまったかもしれない。

この3曲が聴けただけでも、今年のワールド・ハピネスは僕にとって大切なものになったといえる。
フェス全体としてのプレイリストは(個人的には)昨年のほうがよかったように思うが、がっかりするようなものではなく、ただ、フェスの最後を飾る曲は『東京ブロンクス』でなくてもよかったかもなあ、とは思った。とはいえこれは、僕がこの曲について辞書的な知識しか持っていないというか、単になじみがないというだけのことだ。

今回のフェス参加での収穫は、一人で参加する時のコツのようなものをつかめたことだろう。そのおかげで、公式Tシャツの購入や、いわゆるフェス飯を食べることもできた。どちらも昨年はできなかったことである。極端に不便というほどではないのだけれど、やはりひとりでは身動きが取りにくいので、ちょっとしたコツのようなものは会得しておいて損はない(まあ、他のフェスに行ったことがないので、フェス全般がそういうものなのかというところはよくわからないのですが)。

あと、すげえ暑いとトイレに行く必要がなくなるということも実体験できた。
「いくら酒を飲んでも、暑ければすべて汗になる」というのは、昨年、ハピネスさんに教えてもらったことなのだが、誇張ではなかったのだ。
この日、ビールを大きめのコップ一杯分とワインを660ミリリットルと水を1.5リットル飲んだのだが、フェスの間、トイレに行くことはなかった。お酒を飲むとトイレが近くなるという才能の持ち主の僕にしてみれば異常事態といっていい。ちなみに昨年はいわゆる曇天で、気温が高くならない分すごしやすかったものの、何回かトイレに行き、そのたびに帰り道で迷っていたのだ。広場にぎっしりといる人がみんな立っているような状況で、自分のレジャーシートとバッグを見つけるのはなかなか難しいのである(少なくとも僕のような者には)。

ところで。
フェスも終盤にさしかかった頃、ある事実を僕は知り、その事実はそれなりに僕を驚かせたのであった。
どうやら僕は、フェスで音楽を聴くと身体が奇妙な動きをするようなのだ。「音楽に合わせて踊る」というようないいかたができればいいのだが、残念ながら僕の場合は「奇妙な動き」に該当するだろう。
音楽に合わせて身体が動く、ということ自体は日常生活の中でもよくあることだが、フェスという状況の影響でその動きが大きくなり、その結果として「奇妙な動き」が出現することになるようだ。
フェスの最中、なにかの拍子に、ふと気付いたことである。

「空の下で音楽を聴くという特殊な状況に飲み込まれて、いつもより大きく身体が動いている」
そして、
「その動きは、おそらく奇妙だ」

ちなみに、なるべく冷静に、客観的にいうと、僕の動きは「なんだか煮え切らない中途半端な踊り」のように見えているような気がする。

こういうことができるのは、もしかしたらひとりでフェスに行く唯一のメリットかもしれない。自分の動きをしっかりと分析したわけではないが、これは知人にはちょっと見せられないような気がするのだ。
音楽に合わせて身体が動くのは自然なことなので、人目を気にして無理に棒立ちでいるのも妙な話だし、とはいえアレはお見せできるシロモノではないし、まあ、僕は、ひとりでフェスに参加するほうがいいタイプなのかもしれない。