CITRON.

のん気で内気で移り気で。

ハンドスピナー・香子。

娘がTUTAYAで借りてきたももいろクローバーZのCDをパソコンにコピーする。この後、娘のiPodへのコピーを行うことになる。
有安杏果脱退のショックでファンクラブは退会したが、ももクロの応援は続けているようだ。ちなみに娘にももクロを吹き込んだのは僕だ。親から子へ受け継がれるももクロ。僕の中に、娘に継ぐことのできるものが他にもあるだろうか。あるような気もするし、ないような気もする。

コピーしている待ち時間に、100円ショップで買ったハンドスピナーを回してみる。たまたま見つけてつい買ってしまったのだが、手の中でただただ回っているだけのものなのに、ちょっとクセになるところがある。それにしても、100円ショップというのは何でも売っているなあ、と思う。

このハンドスピナーについては僕よりも娘が夢中になっていて、ハマり過ぎた果てに言い出したのが、

「これはもう、名前をつけるべきだと思うのだが」

なのであった。
血のつながった家族の提案ではあるが、残念ながらまったく賛同できない。
賛同はできないものの、僕の意見とは関係なくそれは既に娘の中での決定事項になったようで、次に言ったのが、

「このハンドスピナー、性別はどっちだと思う?」

というものだ。断言してもいいが、ここ数年、これほどの難問に出くわしたことはない。
僕が頭を抱えている間に娘がハンドスピナーの性別を女の子と断定し、その名付けを一任された。ここまできたら娘が勝手につければいいようなものなのだが、

「これはお父さんのハンドスピナーなんだから、責任もって親が名付けないと」

と、一瞬だけ説得力のあることを言いやがる。
何をどう言っても文句を言われそうなので、とりあえず名前を考えることにする。一瞬だけ考えた後、口を「す」の字に開いたところで、

「言っとくけど、ハンドスピナーだからスピ子、とかダメだからね。へんな名前をつけると娘がグレるよ」

と警告され、あわてて口を閉じる。
ハンドスピナーは銀色で、その色、デザイン、回転している時の様子から、なんとなくSFっぽい雰囲気がある。
カタカナで、SFっぽい名前。
数分考えた後、僕が提出した答えはこうだ。

「ステファニー」

……これのどこがどうSFっぽいのか、自分でもうまく説明できないが、ジャネットとかスーザンとかいうよりはそれっぽいのではないだろうか。というか、今となってはそっとしておいてほしい命名案ではある。
これに対しての娘の反応は、

「……わかってねえなあ」

というもので、結局のところ、僕のハンドスピナーには「香子」という名前がついた。娘の命名で、「こうこ」と呼ぶそうだ。「香り立つような子」ということらしい。これはこれでいろいろ問いただしたくなる名前ではある。

その後、娘はしばらく「香子」で遊び、僕の手に戻ってきた時には何ヵ所かにマスキングテープが貼られていた。どうやら、回転した時の色の変化を楽しんだりしたらしい。
そのマスキングテープの貼られ方がかなり雑で、ああ、僕の遺伝子だなあと思うのであった。