会社の帰り、なんとなく御徒町で降りて、上野まで歩く。
いわゆるアメ横を歩くのはずいぶんと久しぶりのような気がする。そもそも出不精なので、自宅からそこそこ離れた繁華街に行けばだいたいは久しぶりの出来事になる。
アメ横って、こんなにブレード・ランナー風というか無国籍風な通りだったんだっけ、などと思いつつ歩く。昔はこう、なんというか、雑然とにぎやかではあったけど、それはあくまで日本的な雑然だったような気がするのだが、それは僕の思い違いだったのだろうか。そもそも僕の中のアメ横観とは、子供の頃に植えつけられた「１年に一度くらいスニーカーを買いに行くところ」というものを発端としていて、そこからあまり進歩はしていない。そういう目線でアメ横を眺めていれば、見落としていることはたくさんありそうだ。
そういえば、銀座とか有楽町は、10代の僕にとっては「映画を観るのに便利な街」ということになっていて、そういう思い込みが強かったせいで、「それはそうなんだけど、それ以外にもあそこらへんにはいろいろあるんだよ」ということを体感的に知ったのはけっこう後のことだったような気がする。街の印象というものは、何を目当てでそこに行ったのかで大きく変わってしまうのだろう……って、文字にするとわりと当たり前の話ではある。
そういえば、スターバックス・コーヒーが銀座に一号店を出した時にわざわざ西東京からコーヒーを飲みに行ったような記憶がある。調べてみるとあれはもう20年以上前のことらしい。スタバなんて最近のものだと思ってました。
夜のアメ横をてくてくと歩く。
通りにテーブルとイスが出してあって、そこで何かを揚げたものを食べながらビールを飲んでいる人がいる。僕の視力と知識ではそれが何を揚げたものなのかよくわからないがなんだが美味そうだ。
上野駅について、いそいそと例のスタンプを押して電車に乗る。
もちろん御徒町でも押した。
上野がガンダム、御徒町がマ・クベだ。
これが機械の名前と人物の名前を並べたものだということが、スタバなんてものごころついたときからあったよね、というような世代の人にはわからないかもしれない。
