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CITRON.

のん気で内気で移り気で。

ほぼ実況生中継。

ある日のこと。

飲み会の帰り、それなりに酔っぱらった状態で僕は電車に乗っている。
それにしても、途中の駅で運良く座れて「こりゃラッキー」などと思った時に限って、かなり高い確率で前に立っている人が泥酔しているのはどういうことだろう。
もしかしたら、被害妄想気味の思い込みかもしれないが、現実的な問題として、つり革につかまった手と、おぼつかない足先を支点として、泥酔した小太りの男が目の前でくるくると回っている。この動きは何かに似ているのだが思い出せない。一瞬、「地球ゴマかも」と思ったのだが全然違う。
それはそれとして、地球ゴマなんて言葉を思い出したのは何十年ぶりだろう。今の若い人に通用する言葉なのだろうか。

小太りの男の体が回転するたびに、座っている僕のヒザにあたる。僕の心がせまいのかもしれないが、正直あまり愉快ではない。回転する体が僕にあたるたびに、男は「チッ」と舌打ちをする。小心者の僕としてはドキドキが止まらない。ドキドキが止まらないからといって、これは決して恋などではない。……って、そんなこと当たり前じゃないか。酔っぱらっているからといって、何を書いてもいいというものではない。

自宅の最寄り駅まであと3駅。
もうしばらくのガマンだ。

そう思った矢先、急ブレーキをかけて電車が止まる。しばらくしてから流れてきた車内アナウンスによると、隣の駅でホームから人が転落したそうだ。
残念ながら、電車が止まっても男の回転は止まらない。
これがいわゆる、「イマココ!」という状況である。
長い夜になりそうだ。