CITRON.

のん気で内気で移り気で。

俺はアキバに行く。

池袋駅の構内に貼られたポスターを熱心に撮影している女の子がいた。年齢的には中学生くらいに見える。
ポスターはかなり大きなもので、内容は、人気男性声優のコンサート・ツアーの告知のようだ。その声優の写真はかなり大きなサイズで印刷されていて、女の子は、右から左から角度を変えなから、シャッターを押しまくっていた。
よほど好きなんだねえ、などと思いつつ、見るともなく彼女の顔を見て驚いた。
彼女は泣きながらシャッターを押していたのである。頬の色や口角の上がり具合、うっかりするとその場でジャンプしかねない体の動き(写真の手ブレが心配です)からそれがうれし泣きであることは間違いない。
そうか泣くほどなのか、と驚きつつ、ほんっとうによかったねえ、とも思ったのである。

娘に教えてもらったところによると、池袋のアニメ関連ショップは女子向けアニメを推し、秋葉原のそれは男子向けアニメを推しているらしい(もちろん例外もあるとのこと)。
女子向けアニメということは萌えの対象は男性キャラで、男子向けアニメということは萌えの対象は女性キャラということになる(もちろん例外もあるとのこと)。ではガチのアニオタを自称する我が娘は最寄りの繁華街が池袋でラッキーかというとコトはそう単純ではなく、娘は自称ユリ属性なので、アニメの嗜好は男子向けなのだ。いや、なのだって言われても「だからなんなんだよ」という話だとは思うのだが、娘にとっては活動しやすい場所は秋葉原で、秋葉原が通勤定期圏内にあるというだけで僕は少しだけ尊敬されている(「すげえ、アキバで降り放題じゃん」)。
これはまったくの余談になるのだが、娘が参加するアニメのイベントは、上記のような事情のため、集まるファンの男性率が非常に高いそうだ。その上年齢層も(娘よりは)高めらしく、オタク初心者だった頃の娘は「女は大人になったらアニオタをやったらいかんのか」と思っていたらしい。娘が感じた男性率の高さは作品の内容的にいたしかたないところはあると思うのだが、いわゆるアニオタの総数の中での男女比ってどういう塩梅になるのだろう。ちょっと知りたい気はする。
目下のところ、娘の目標は「大人になっても立派なアニオタになる」ことらしい。もちろんユリ属性はそのままで。

大昔のアニメであるところの『カウボーイ・ビバップ』の主人公、スパイク・スピーゲルの愛機であるソードフィッシュが出てくるらしいというようなことがネットのどこかに書いてあったので、『レディ・プレイヤー1』を観る。残念ながらソードフィッシュを見つけることはできなかった(もしかしたらこれなのでは……というものはあったのだが)が、たいへん面白い映画だと思う。
映画の中の言い方でいうところのポップ・カルチャー、つまり、映画とかアニメとかゲームとかポップ・ミュージックとか、そういうものに愛情が注げる人なら間違いなく楽しめるのではないだろうか。年代的にいうと70年代後半から80年代を知っている人たちが一番フィットすると思われるが、よく出来た娯楽映画が常にそうであるように、細かい名詞がわからなくても充分面白いはずだ。

ところで、僕はこの映画を日本語吹き替え版で観たのだが、ゲーム機メーカー「アタリ」の発音が少し気になったのだ。日本語の「当たり」と同じような発音に聞こえたのだが、日本流のアタリの発音は、もっと「ア」の音が強かったような気がするのだが。

というわけで、今回のタイトルは『レディ・プレイヤー1』に出てきたセリフをリスペクトして考えてみた。正直、あまりうまくいってないと思う。