CITRON.

のん気で内気で移り気で。

人間の秘めた可能性について(トイレ篇)。

ぼんやりしていて朝の支度のスタートが遅れ、大急ぎで準備をしながらたいして広くもない自宅を右往左往していたところ、気が付いたらトイレの個室で便座に座りながらコーヒー豆をひいていたのであった。

トイレも大事、コーヒーの準備も大事、ということで、効率よくふたつの作業を同タイミングで行うために脳が決断した作戦なのだろうが、我に返るとびっくりする。せまい個室の中からごりごりと音がするのはちょっと怪談のようでもある。家族が寝ていてよかった。

びっくりはしたものの、作業の内容自体に問題はない。トイレでひいたからといってコーヒーの味が落ちることもないだろ……

「コーヒーは匂いを吸いやすい性質を持っていて、その性質を利用して使用済みのコーヒー豆は脱臭剤として使うことができる。冷蔵庫の匂いが移るという理由で、コーヒー豆の保管に冷蔵庫を使うことを勧めないコーヒー店も存在する」

突然稲妻のように閃いた豆知識がすべての思考や行動を中断し、僕は全力でトイレからの離脱を試みたのであった。

やろうと思えば、トイレタイムはあそこまで短縮できるのだ。