CITRON.

のん気で内気で移り気で。

彼女にはお見通し。

現役女子高生であるところの娘が何が好きか、どういうものを喜ぶのか、そういうことは年々わかりにくくなっていて、それはまあ、そういうものかもしれないなと思うのだ。そもそも性別も違うし、年齢だってうんと違う。親子ほど(いや、実際に親子なのだが)歳の離れた異性の嗜好など、無粋なおっさんにはそうそう簡単にわかるものではない……と個人的には思うのだ。

ところが、娘からしてみると父親の嗜好など手に取るようにわかるようで、現役女子高生であると同時に現役アニオタでもある娘が「これ、絶対好きだと思う」と言いながら薦めてくるアニメ作品やアニソンはけっこう僕の好みに合うことが多く、最近おススメされたあるアニメのオープニング曲など、二日に一度くらいの割合でYoutubeの試聴動画を観ていたりする。それくらい気に入っているなら買えよ、という話もあるのだが、購入ボタンをポチるのかレンタルで済ますのか、そのうち娘と協議することになるだろう。

ちなみに僕と娘は同じスマートフォン用ゲームで遊んでいるのだが、娘に言わせると、そこに出てくる30人以上の女の子キャラの中から「お父さんが好きそうなキャラ・ベスト5」を選ぶくらいなら簡単にできるらしい。本人としては「そんな難しいことできてたまるか」と思うのだが、娘からしてみると「ちょろい。というかちょろ助」とのことなのだ。
親をさりげなく間の抜けた名前に改名したくなるくらいに自信があるのであれば、ひとつ披露してもらおうじゃないか、ということになり、娘がチョイスしたベスト5を聞いてみたのだが、これが意外といい線を突いている。ベスト5として具体的に名前が挙がることにより、自覚のある好み以外に、無意識の好みのようなものも目の当たりにすることになり、「ああ、自分はそういう人間なのか」と再確認させられたくらいだ。

「なかなかいいチョイスのベスト5だと思います」
僕は正直にそう言ったものの、さきほど「ちょろ助」扱いされたので、なんとなく敬語になってしまった。「親の威厳」というような言葉を重視にする人たちに怒られそうな態度ではあるが、そもそもそこを気にし始めたら、娘と同じゲーム(それも数十人の女子高生が世界を救うという内容)をしている時点でアウトだろう。

興味があったので、そのベスト5を考えるにあたっての基準のようなものを聞いてみた。
娘は、ごく当たり前のことを説明するように(たとえば、「蛇口をひねると水が出るんですよ」というくらいの調子で)こんなことを言い始めた。

「基本、見た目よりもキャラ重視。あ、キャラ重視ってのは、面白いこと言う子が好きってことだけど電波系が好きってことじゃない。見た目はわりとなんでもありっぽいけどどちらかといえば色白が好き。意外と胸の大きさにこだわりはないみたいだけどお尻は大……」
「わかったもうそれ以上言うな」
……つい、やや強い調子で制止してしまったのは、ここにきて「親の威厳」が気になったからではない。
なんだか、エスパーに心を読まれているようでちょっと怖くなってしまったのだ。

ところで、娘におススメされたアニソンとは、『少女終末旅行』という作品のオープニング曲で、タイトルは『動く、動く』というらしい。
↓の動画でいうと冒頭から1分半くらいまでがその曲になっていて、途中、女の子ふたりが踊るところがあるのだが、なんならその振り付けを覚えたいくらい気に入っている。


TVアニメ『少女終末旅行』OP&EDシングル試聴動画