会社からの帰り道、マンションとマンションの間のせまい夜空に、ぺかぺかと光る月が見えた。
そういえば、何日か前にウルトラだかスーパーだかアルティメットだかマーベラスだかデリシャスだか、とにかく大きな月が見えたらしい。
今宵の月は、もう通常サイズなのだろうか。それとも、通常よりはやや大きめの、「中辛」相当のものなのだろうか。
"I love you."を「月がきれいですね」と訳したのは夏目漱石らしいが、そういうロマンチックな要素を抜きにして、今夜の月はきれいであった。
特にそのまぶしさはずっと見ていられないほどで、それでもずっと見ていると、ひたすら明るいその丸が夜空に開いた穴のようにも見えてくる。
穴の向こうは別世界か。そこから漏れ出した光は何の光か。
ざっくりいってしまえば、太陽の光が月の地面に反射した光のはずなのに。それだけの光なのにこの神々しさはなんだ。
……というようなことを考えながら歩いていると、本来曲がるべき路地を間違えたりして、よそのマンションに到着したりするので今後は気をつけよう。
