CITRON.

のん気で内気で移り気で。

断捨離ドランカー。

去年の夏より、ウィスキーがストレートで飲めるようになった。
特に自慢できるようなことではない。ただ、今までだと濃いやら辛いやら苦いやらでとても飲めなかったものが、「お、これはこれで美味いような気がしないでもない」と思えるようになったというだけのことだ。基本的には薄ーいハイボールで飲むのが好きなのだが、まあ、ストレートでも飲めなくはないよ、というくらいの話である。

去年の夏のある日、突然、それこそ神様のお告げのように、
「ストレートで飲めるようになれば、氷や水や炭酸水を用意しなくてもいい」
ということに気づいたのだ。「ウィスキーそのものの味を知りたい」というような前向きな理由ではないところが実に僕らしいといえば僕らしいが、なんだか誰かに謝らないといけないような気持ちにもなる。
ただ、きっかけはきっかけとして、その後本当に、今まで飲めなかったストレートのウィスキーが飲めるようになったのだから人生というものはわからない。もちろん、多少の練習期間は必要だったが、ある意味で僕は、自分の中にあるいくつもの不可能を、たった一つではあるけれど、可能に変えたのだ。これはこれで「なせば成る」といういい話方面の例として、どこかに記録しておいてもいいのではないだろうか。誰の心にも響かないだろうけど。

ちなみに今年の夏は、氷を入れないハイボールを普通に飲めるようになった。
炭酸水もウィスキーもほぼ室温という状態で、である。
これもまあ、あれこれ用意したり冷やしたりするのが面倒くさい、というダメ心が覚醒させた能力ではあるのだが、慣れてしまえばどうということはない。

もちろん、暑い日によくある「とにかく冷たいビールを飲みたいんだよ!」というようなシチュエーションでこんなことはしない。清涼感のあるお酒で体を冷やしたい、というような状況ではなく、もっとこうなんというか、身体の底のほうがアルコールそのものを無性に欲しているような時に、そういう飲み方でしのぐことができる、という話だ。

そのうち、グラスを出すのも面倒だ、などとつぶやきながら、ビンから直接ウィスキーを飲むようになりそうで、それはひょっとするとちょっとまずいのかもしれないな、と思ったりしている。その先をどんどん突き進んでいくと、お酒のビンを見ただけで酔っぱらうようになるかもしれない。