CITRON.

のん気で内気で移り気で。

だけども問題は今日の雨。傘がない。

出社時に傘をなくす。

なくした、というか、電車に置き忘れる。
昼休みに鉄道会社に電話で問い合わせてみたところ、僕の傘と特徴が一致するものは届けられていないという。時間をずらして問い合わせるともしかしたら……ということもあるらしいので、帰宅時に直接駅で聞いてみることにした。ワンチャンあるかも、というやつだ。

駅員さんに朝の通勤時に傘を置き忘れた旨を伝えると、傘の種類(折りたたみか、いわゆる長い傘か)、色を聞かれる。それに該当するものがあれば見せてもらえるらしい。
残念ながら僕がなくした傘と同じ条件のものは届けられていなかった。僕は自分の傘の色について、メーカーの表記にならって「カーキ」と伝えたのだが、今日、届けられた傘は黒と緑が一本ずつだけだったそうだ。

ふと思い立ち、緑色の傘のほうを見せてもらえないか駅員さんにお願いしてみる。「カーキ」というのは色の定義としては大変おおらかで、サンドベージュあたりから濃いめの緑、要はミリタリー・カラー全般が対象になったりするらしいので、ここにある緑が僕のカーキという可能性もなくはない、と思ったのだ。
駅員さんは、「本来、条件にあわない傘はお見せできないルールなのですが」というようなことを言いつつも奥から緑色の傘を持ってきてくれた。お見せできないルールなら簡単に持ってこないほうがいいのではないかと心配になったのだが、目の前に現れた傘を見た瞬間、その軽率ともとられかねない駅員さんの行動について一気に理解することができた。

「おそらく違うと思いますよ、子供用サイズなので」

そう言いながら、駅員さんは小さな傘を見せてくれたのであった。

それなら先に言ってください、と思った。