CITRON.

のん気で内気で移り気で。

クール・ジャパンの末端で。

娘に、某繁華街のアニメ・ショップに連れていかれる。
そこは中古グッズを扱う店で、日々悪化する財政をなんとかするため、コレクションのいくつかを手放すことにしたらしい。

未成年の者がグッズの買い取りを依頼する場合、保護者の承諾書のようなものが必要なのだが、保護者本人を連れて行けばその手間は省けるはず……という娘の目論見のもと、今回僕が召喚されたわけだ。まあ、そのショップの近くにある本屋に行きたいと思っていたので、おとなしく召喚されることにした。

持参したグッズの査定を店員さんにお願いし、待ち時間の間、店内をウロウロする。
そこで扱われているグッズがなんという作品のものなのか、だいたいわからない。ただ、世の中には可愛い女の子がたくさんいるということはよくわかった。
僕でもわかる作品の登場人物がバニー・ガールの恰好をしているフィギュアがあったので、娘に「あれ、この子ってこんな格好してたっけ?」と聞いてみる。
「作品中にバニーの恰好をするシーンがあったかどうかなんて関係ない。この子のバニー姿を見たいという人間がいて、それを作りたいという人間がいる。それだけ」
実にクールな回答だと思う。

しばらくして査定が終わり、娘はいくらかの現金を手に入れた。無事に売買契約成立ということで、本来なら娘がそういう内容の用紙に住所やら名前やら記入するところなのだが、店員さんの話によると今回は僕に記入してほしいらしい。
どうやら、娘の売買について保護者が承認する、という体裁よりも、僕がグッズを売りに来たという体裁のほうが記入する用紙が少なくて済むということなのだ。まあ、言われてみればそういう気はする。

ということでこの店には、アニメ・グッズ18点を売りに来た中年男として、僕の名前が残っている。