CITRON.

のん気で内気で移り気で。

そのコーヒーは猫の味。

吾輩は猫であるブレンド」というコーヒー豆を買う。もちろん猫味というわけではない。
やなか珈琲店の「飲める文庫」というシリーズで、往年の名作の読後感をコーヒーで再現したものらしい。100グラムで950円。僕の宇宙の中ではかなりの贅沢品だ。

飲んでみるとたしかに、
「おお、これはまさしく『我輩は猫である』である」
という気分になる……ということはなかったのだが、普通に美味しいコーヒーなのであった。飲みやすく、ほろ苦い。
この、「飲みやすく、ほろ苦い」が『我輩は猫である』の印象だと言われればそういう気もしないでもない。

ちなみにこのシリーズは『我輩は猫である』の他に『人間失格』、『若菜集』、『舞姫』、『こころ』、『三四郎』がラインナップされていて、それぞれどういう飲み心地なのか気になるところだ。ただ残念なことに、それぞれの作品についての内容とか感想について、下手をすると読んだかどうかすら記憶が定かではないのである。『人間失格』、『こころ』、『三四郎』あたりははるか昔に読んだような気もするのだが、『三四郎』のことを思い出そうとすると「あ、それは『坊ちゃん』ことじゃん」みたいなことになったりするので非常に心もとない。

それはそれとして。
昔から思っていたのだが、島崎藤村という名前はどう見ても漫才のコンビ名のようだ。

おぎやはぎ品川庄司島崎藤村

……こうして並べると、とてもおさまりがいいような気がするのは僕だけだろうか。