CITRON.

のん気で内気で移り気で。

四月馬鹿未遂事件。

エイプリル・フールに嘘100%の文章を書こうと思い、普段の自分の生活にはまったく縁のない、バイクや革ジャンやアナログ・レコードや海岸沿いの道路や高いウイスキーについて調べていたらいつの間にか週末が終わってしまった。
なんだかとても残念な気持ちでいっぱいだ。
ちなみに、その嘘100%日記の中では、我が家の愛犬はグレート・ピレニーズで、娘が小さい頃はよく背中に乗せて散歩に行っていたことになっていたし、新宿には行きつけの中古レコード屋があって、そこの店主はアメリカ人だから英語で話したほうが話がはやい、というようなエピソードも考えていた。「彼の英語は○○なまりがきつくて、正直聞き取りにくいこともあるのだが」の、○○には何を当てはめるとかっちょいいのか考えたりしていたのだ。なんて無駄な時間の使い方だ。

まあ、妄想の中とはいえ、ガレージと防音処理済みのステレオ部屋がある一軒家に住むことができたし、超大型犬であるグレート・ピレニーズにじゃれつかれて、その勢いで押し倒されながら、「おいおい落ち着けってお嬢さん。散歩にはまだはやいだろ? それとも、どこかのプレイ・ボーイとデートの約束でもしてるのかい」などと言ったりできたのでよしとしよう。

4月1日といえば、昔の会社の同期からメールが来て、突然、新宿の安居酒屋に飲みに行ったのだ(ついさっきまで妄想の中で高級スコッチ・ウイスキーをストレートで飲んでいたので、恐るべき落差ではある)。
彼は、こちらが、
庵野秀明の『シン・ゴジラ』観た?」
と聞けば、
「ブルーレイ買った」
と答えるような属性の人なので、自然と会話にはそういう成分が多く含まれ、ふと気づくと、
僕「そういえばシン・ゴジラのガチャガチャは出来がいいっすよ」
彼「ならば一応チェックするか」
という展開になり、夜の新宿を徘徊することになった。

結論から先にいうと、新宿にゴジラはもういないと思われる。
西新宿からはじまった捕獲作戦は、最終的に東新宿まで遠征することになったのだが、その間、まったくゴジラには会えなかったのだ。元同期には「そのゴジラのガチャガチャはお前の妄想の産物で、実際にはそんなものはなかった」などと決めつけられ、けっこう悔しい思いをしたのだが、つまりは、人気のあるガチャガチャはすぐ完売してしまうということなのだろうか。それにしても、僕の持っている情報が正しければ、そのガチャガチャの発売開始日は先月の17日なのである。まだ2週間くらいしか経っていないではないか。「会社の帰り、乗換駅でちょっと寄り道してガチャガチャを1回する。その後、電車の中でわくわくしながらそれを開封」というような、のんびりした僕のプレイ・スタイルはガチャガチャ界では通用しないようだ。何が出てくるかわからないというのがガチャガチャの前提であり、かつ、チャレンジできる期間が短いとなれば、見つけた時に複数回まわす覚悟で挑み、出てきたカプセルはその場で開封&確認、というのが正しいスタイルなのかもしれない。

ある種の大人の人たちにとっては、ほろ酔いの大人ふたりがガチャガチャを求めて夜の繁華街を徘徊する、というエピソードそのものが嘘100%な話に聞こえるかもしれない。
ところが、これが意外な事なのかどうなのかよくわからないが、夜のガチャガチャのまわりには大人がけっこうたくさんいるのである。もっというと、女性の割合もけっこう高い。それが生物だろうが静物だろうが、ガチャガチャに入っているミニチュアの出来がけっこうよかったりするので、ちっこいもの好きの人たちにはちょっとたまらん魅力があったりするのだ。
一応断っておくと、これは本当の話である。