CITRON.

のん気で内気で移り気で。

曇天下でスウィング。:Slow LIVE'18について。

Slow LIVE '18という、池上本門寺で行われるフェスは、公式サイトに書いてあるところによると、「大人のミニフェス」らしい。
座席は指定されているし、椅子はあるし、ステージはひとつしかないから移動の手間はないし、ステージ転換の間に買い物をしてもそれほど混まないし、そこを指して「大人の」と言っているのかどうかわからないが、小規模ならではの、なかなか快適なフェスであった。

座席が決まっているというのは、ひとりで参加する人間にとってはなかなか便利なものだ。芝生の上に小さなレジャーシートを敷いて場所取りをするフェスのように、トイレに行って帰ってきてみたら自分の場所に戻るコースにみっちりと他のお客さんのレジャーシートが敷いてあったとか、立ってみている他のお客さんの背中にまぎれて、自分のレジャーシートの場所がよくわからなくなった、ということがない。

ビールやワインをちびちびと飲みながら、音楽にあわせて身体をゆらゆらさせて観るフェスはいいものだ。外で音楽を聴く時は、ゆらゆらしながらのほうが絶対に楽しい、と個人的には思う。それは、リズムにあわせて踊りだす、というほど大げさなものではなく、かるーく体を上下左右前後に動かすという程度のものなのだが、こうすると、なんというか、身体で音楽を聴いている、という気分になる。
出演するアーティストを全員知っているわけではないのだが、フェスで聴くと誰でもだいだいよく聴こえるもので(感想には個人差があります)、フェスではじめて聴いて気に入ったバンドのCDを後日聴いてみたら「まあ普通ですな」ということはけっこうよくあることだ。

音楽が、空気として身体に伝わってくるのがフェスの魅力だとすれば、それは花火大会のよさと似ているのかもしれない。マンションの窓から見える花火大会を、エアコンの効いた部屋で見るのもいいものだが、暑い思いをしながら、現地で重低音を身体で受け止めつつ見る花火大会のよさはそれとはまったく別のものだ。

途中、大雨になってしまったのは残念だが、それを除けばいいフェスだったと思う。
「雨に降られるのもフェスの楽しみ」という人も多いとは思うが、僕はそこまで人間ができていないようで、降雨は単に「やっかいな事象」でしかない。
ただ、これはひょっとすると、僕がひとりで参加しているからで、そのトラブルを分かち合う仲間がそばにいれば、また印象も変わってくるのかもしれない。

ただ、「いやいやそれは違う。レインコートで隠しきれなかった下半身を大粒の雨がぐっしょりと濡らし、水分が浸入したスニーカーの重みと、じわじわと忍び寄る寒さをひとりで噛みしめることこそがフェスの醍醐味」……というような人もきっといるとは思う。
世の中にはいろいろなものがあり、いろいろな楽しみ方がある、ということだ。

そういえば、真心ブラザーズを生で観たのは初めてで、やはり『サマーヌード』にはグッとくるものがあった。
そういう世代なのである。