CITRON.

のん気で内気で移り気で。

僕の主成分。

「あんたの体の半分は、カルピスでできてるのよ」

小学生くらいの頃、母親から突然、そう宣告されたことがある。母はいつになく真面目な様子で、それこそ、「これまで伏せていた出生の秘密を、今、打ち明ける」というような、真剣な口調でそう言ったのだ。

今から数十年前、授乳期真っ最中の僕が、夏バテだかなんだかで母乳も粉ミルクも受け付けなくなった時期があったらしい。はじめて子育てに挑戦していた母はたいそうあわてて、思いつく限りの対策を講じ、その結果、

「なぜかこの子はカルピスだけは飲む」

ということを発見し、かくして僕は、ひと夏をカルピスのみで過ごすことになった。それが医学的栄養学的に正解だったのかどうか、そこらへんのことはわからないが、僕がある夏、カルピスで命をつなぎ、その後数十年、なんとなく生き続けているということを考えると、母のしたことはそれほど間違っていたわけではないように思う。
「あんたの体の半分は、カルピスでできてるのよ」というのはいささか大げさに聞こえなくもないが、当時の母は、それこそカルピスにすがるようにして過ごしていたのだろう。そのへんについて母は多くを語らないが、とても不安な日々だったらしい。

……と、いう過去と関係があるのかどうかわからないが、僕はけっこうカルピスが好きである。大学生くらいの頃、カルピス・ウォーターが発売された時には「これは発明だ!」と大絶賛した者のひとりだ(いや、そういう者が僕の他にどれだけいるのかよくわからないけど)。
ちなみに、カルピスがなぜ原液、というか濃い状態で売られていたかというと、その理由のひとつは、水で薄めた状態だと日持ちがしないから……だったはずだ(大昔の知識を引っ張りだしているのであまり自信はなけれど)。その問題をどういう技術で解決したのか知らないが、すぐ飲める状態のカルピスが外で気軽に買えるようになるというのは、それなりに画期的な出来事だったのである。

7月7日はカルピスの誕生日、ということで、カルピスについてふと思いついたことを書いてみた。

カルピス、今日も飲みました。
相変わらずおいしいなあ。