CITRON.

のん気で内気で移り気で。

人工知能乱入。

家族でぽつぽつと雑談をしていたとき、突然、僕のiPhoneに住んでいるSiriさんが、

「そうなんですか。」

と相づちを打ってきたのである。
Siriさんを起動した記憶はなく、(まったく知らない仲ではない、とはいえ)突然会話に乱入してきた第三者に、家族総出でおおいに驚いたのであった。

iPhoneの画面を見てみると、Siriさんが起動していて、そこには、

「Hey Siri 楽しい大好き」

という文字列と、それに対するSiriさんの回答として、

「そうなんですか。」

というコメントが表示されている。

これはつまり、僕がSiriさんに「楽しい大好き」と話しかけ、それに対するアンサーとして、「そうなんですか」と返してきたことになる。携帯電話に「大好き」と話しかける中年男というのもどうかと思うが、それにしてもSiriさんの対応もやや素っ気なさ過ぎるような気がしないでもない。

ここで一番の問題となるのは、実際には僕は「Hey Siri(以下略)」というようなセリフを言っていないということだ。
僕がこの時に言ったのは、往年のヒット曲のタイトル、つまり、

「うれしい!たのしい!大好き!」

なのである。
(誰でも知っているヒット曲の名前を書いたつもりなのだが、ちょっと調べてみたら今から30年近く前の曲らしい。それはそれで驚くべき事実だ)

Siriさんは、僕が言った「うれしい」という言葉を「Hey Siri」と聞き間違えたということか。

「うれしい」
「へいしり」

……似ているところがないとはいわないが、聞き間違えるほど似ているような気もしない。

僕の発音に問題があるのか、Siriさんの耳に問題があるのか、大変気になるところだ。