CITRON.

のん気で内気で移り気で。

夜のメロディ。

会社からの帰り道、駅に向かう途中にある桜並木は、少し葉の色が目立つようになってきた。朝はここまで緑色は目立たなかったような気がする。タイルで舗装された歩道にはたくさんの花びらが落ちている。今日いちにちでずいぶんと散ってしまったようだ。

夜桜の下を少しゆっくりと歩きながら、それっぽい歌を思い出して、ぶつぶつとつぶやいてみる。本当は、口ずさんでみる、といきたいところなのだが、僕は歌が下手なのだ。

「春の夜にぼくら/からっぽになるまで/ひらひらと舞う花びらの中にいた」(サニーデイ・サービス)
「花びらがゆっくりと/ふたりを包むよ/星の夜に」(ボンジュール鈴木)

そういえば後者は、桜よりも百合が似合う歌だった。

満開の桜のような、心が浮き立つような感じは少なくなるが、少し葉の色がまざった桜もなかなかいい。少し気分がきりりとするような、清々しいような気分になる。どちらも自分には少ない成分なので、こういう機会に吸収することにする。

そういえば、散りはじめの桜特有の、白とピンクと緑の混ざり具合は、えび満月に少し似ている。えび満月とは、白くて薄い、えびとあおさの入ったせんべいだ。
えび満月のえび部分を少なくすると、その色合いは散り始めの桜に近くなる。少し想像力は必要だが、意外と「ないこともない」くらいのそっくりさんなのではないだろうか。
それはそれとして、えび満月は美味い。