何かの薬のキャッチ・フレーズに「早く溶けて胃にやさしい」というようなものがあったが、「では胃にやさしくない薬とはどういうものか」という話になれば、それは今服用している風邪薬と断言したい。
僕にも空腹時に薬を飲んではダメ、という知識くらいはあるので、そういう状況を避けて服用しているにもかかわらず胃にどすんとくる。もっといえば、小さな鉛玉が胃の中に落ちてくるような感じがする。まあ、空腹時に薬を服用した時の「胃袋をわしづかみにされた」ような感じまではいかないものの、なかなかの不快感だ。
それにしてもあの「胃袋をわしづかみにされた」感覚というのは恐ろしいものだ。一度、会社からの帰宅途中、必要に迫られて鎮痛剤を買ってその場で飲んだことがあるのだが、直後に胃袋をわしづかまれてその場でしばらく歩けなくなったのだ。あれは実に怖い出来事であった。
もしもそれが、会社最寄り駅の構内ではなく、自動車がびゅんびゅん走っている道路のど真ん中だったりしたら、間違いなく命を失っていただろう。まあ、自動車がびゅんびゅん走っている道路のど真ん中で鎮痛剤をのむ機会があるかどうかは置いておくとして。
それはさておき今服用しているこの風邪薬なのである。
これは自分で買ってきたものなのだが、どうせ自分しか飲まないから、ということで、やたらと安いものの一番小さいサイズを買ったのだ。やたらと安いというのがどの程度の安さかというと、いつも家族が買ってくるもののだいたい半額だ。
そういうことなのか。
安い薬には「やさしさ」までは配合できないということなのか。
「やさしさ」のない薬とは、ここまで厳しいものなのか。
飲む前に気が重くなる錠剤というのはさすがにはじめてかもしれない。
僕の治癒力が、今度こそ最大限に力を発揮してくれることを切望する。