CITRON.

のん気で内気で移り気で。

かすかすぎる奇跡。

会社から帰ると、AmazonからCDが届いていて、まず最初に思ったのは、

「これ、注文したんだっけ?」

……ということなのであった。
夜中だったり、お酒を飲んでいたりといった、「いつもとはちょっと違う決定力あふるるオレ」状態で買い物ができてしまうインターネットはなかなか要注意で、このCDも「興味はあるがさてどうしたものか」などと腕組みしていた僕の背中を内側からばりばりと引き裂いて現れた「決定力あふるるオレ」がポチったものなのだろう。「決定力あふるるオレ」は揮発性が高いようで、朝にはだいたい消失する。なので、背中が縫い合わされた僕の記憶には残っていない。
もちろん、もともと興味があったものなので、手元に届いて困るということはない。ちなみにこれはシングル盤というやつで、「シングルなら腕組みして悩むほどのこともないだろう」という気もしないでもないが、そこで考え込むのが僕という人間なのだ。

このCDにはおまけとして折り紙が1枚封入されている。特にプレミアムな雰囲気を漂わせているわけでもない、ごく普通のものだ。
全18色の中からランダムに1枚入っているらしいのだが、僕のCDに入っていたものは緑色なのであった。

これは僕にとって、とても小さなかすかな奇跡のようなことなのである。その奇跡の規模はどれくらいのものなのかというと、CDのジャケットから緑色が見えたときに、思わず、

「お!」

と言ってしまう程度、になるだろうか。
僕はもう、緑色が大変好きなのである。
それはある意味、宿命的に。