CITRON.

のん気で内気で移り気で。

帰宅途中の決定力。

それほどよくあることではないが、滅多にないとはいえないくらいの頻度で、僕が使っている通勤電車はなんらかのトラブルで緊急停車する。
「よくあることではないが、滅多にないとはいえない」という頻度がどれくらいのものかというと、たとえば、言おうとした冗談が過不足なく言い切れた時くらい、といえばいいだろうか。

駅のホームで電車が運転を見合わせた場合、車内でそのまま待って様子を見るのか、早々に下車して他の方法を探すのか、その判断はなかなか難しいものがある。結局のところは運まかせみたいなところがあるのだが、個人的には、結局は待っていたほうが早く帰れた、ということが多いような気がするので、ひとまずはその場で待機しつつ様子を見ることにしている。
他の乗客の声や、駅のホームから聞こえてくる駅員の声にかき消されてよく聞こえない車内アナウンスに耳をすませる。何度目かのトライで聞き取ることのできた言葉は、こんなような内容だった。

「前方の電車から、煙が出ています」

……今後、どういう行動をとるべきか、そのための材料とすべき情報としては妙に難易度が高い。
さてさて、どうしたものか。