CITRON.

のん気で内気で移り気で。

眠れぬ夜のために。

なかなか眠れないとか、眠っていてもすぐに起きてしまうとか、そういう夜がたまにある。というか、今晩がそういう日なのである。

そういう時には、ついついそばで寝ている犬を眺めたりなでまわしたりする。今宵の我が愛犬は、うっすらと目を開けて眠っている。他の犬のことは知らないが、ウチの犬は、時々、目を開けて寝ていることがあるのだ。
僕も時々、目をいくらか開けて眠ることがある。もちろん、好きでそうしているわけではなく、体の中のどこかの部署のなにかの都合でそうなるらしい。もしかすると、僕の無駄に大きな目玉に対して、まぶたはやや小さいのかもしれない。そのまぶたで目玉全体を覆うには、腕力とかコツとかいうようなある種の職人芸が必要で、その日の担当のスキルによっては、まぶたをうまく閉められないのだろう。

むかしむかし、眠っている僕の目が開いていることから起きているものと勘違いした人が、延々と話しかけても返事がなかったことを無視されたと思い込み、語気を荒くして抗議をしたらいびきで返事をされた、という伝説が我が家にはあるのだが、エピソードとしては面白いもののさすがに誇張しすぎているような気がする。さすがの僕でも寝ているのか起きているのか区別がつかないほどの大きさで目を開いたまま寝ていることはないと思うのだ。
だからこの伝説については異議申し立てをしたいところなのだが、それによって家庭内の平和が乱される可能性もなくはないので、今のところ沈黙している。