CITRON.

のん気で内気で移り気で。

それはきっと昭和の響き。

出勤時、最寄り駅に着いたところで定期を忘れていることに気付く。
一瞬、切符を買って会社に行こうかとも思ったのだが、そのために必要な費用をカチャカチャチーンと計算すると往復で900円くらいになることがわかり、まっすぐ帰宅したのであった。
会社に行くということはつまり、お金を稼ぎに行くということだ。それなのにお小遣いが900円もなくなってしまうというのは本末転倒なのではないだろうか。それでなくても今月は飲み会が多い。無駄な出費はできるだけ抑えるべきた。それに、そもそも僕は始業の1時間前には会社に到着するような電車に乗っているのである。このタイミングで自宅に戻ったところで遅刻するわけでもない。ただ、確実に座れるお気に入りの電車に乗れなくなるだけだ。

そもそも、余分に歩くのも電車で座れないのも、考えようによっては悪いことばかりではない。ほんの少しかもしれないが運動にはなるだろうし、電車でつり革につかまった姿勢で腰をひねればストレッチになるかもしれない。腰痛を抱える身としては入念に行う価値があるだろう。思わぬアクシデントからはじまった今日という日ではあるが、朝からそれなりに有意義なものを得たと言ってもいいのかもしれない。

……というようにポジティブになれない僕は、「えいちくしょうめ」などとつぶやきながら家路を急ぐのであった。まだ時間には余裕があるのについ急ぎ足になってしまう自分の気の小ささにあきれながら。

ところで、暗算をすると頭の中でカチャカチャチーンという音が鳴るのだが、これはいったい何の音なのだろう。昔は知っていたような気もするのだが、いつの間にかすっかり忘れてしまった。大昔のレジの動作音かなんかなのだろうか。