CITRON.

のん気で内気で移り気で。

眠れぬ夜のために。

この記事をシェアする

両手を体の脇につける「気をつけ」の姿勢のまま、うつぶせでベッドに横たわる、ということがたまにある。両足はそろえて、しかもベッドからはみ出している。
つまり、帰宅してそのまま寝室に直行し、ベッドの端に体が触れた瞬間くらいにそのまま前に倒れたような状態だ。
倒れたままの状態でベッドに横たわり、そのままの姿勢から動けない。
なにか強烈にイヤなことがあったわけでもなく、なにか強烈に困ったわけでもなく、なにか強烈に疲れたわけでもない……というか、とりあえずそういう自覚症状はない。ただなんとなく、体が動いてくれない。おそろしく雑に一言でまとめてしまうと「なんだかなあ……」という状態だ。連日の暑さにやられてしまったのか、それとも他に理由があるのか、それすらはっきりとはわからない。

頭の中では、ベッドに倒れ込みながらも神業的なすばやさでスイッチを入れたエアコンのことを気にしている。今は快適だが、もう少ししたら体の芯が冷えてきそうな予感がするのだ。いつもより設定温度が低いのだろうか。右手の近くにリモコンがあるのはわかっているから、いっそスイッチを切ってしまおうか。しかし、そうするとすぐに暑くなってくるだろう。
なにせ体を動かしたくないから、リモコンで温度を最適値に調節して、一応「切る」タイマーを設定するとか、いっそエアコンのスイッチを切って窓を開けるというような前向きな行動をする気が起きない。しぶしぶやってもいいと思うのは、右手をごそごそ動かして、手に触れたプラスチックの箱に付いている大きめのボタンを指で探すくらいのことだ。「もういっそこのまま寝てしまおうか」というような気持ちにもなったりする。

耳に刺さったイヤホンから、キリンジの『エイリアンズ』が聴こえる。
優しくて、奇妙で、不思議な曲だ。
この曲を聴くと、決まって頭の中に浮かんでくる風景がある。
昼間はどうにもパッとしない連中が、月の明るい夜中にどこかで集まっている。こっそりと、肩を寄せ合うようにしながら「僕たち、こんな有様なんだから、まあしょうがないよね」などと言い合い、月を見上げながら小さく微笑んでいる。
少し甘ったれたような、パッとしない自分に少し酔っているような、これをずっと握りしめていてはいけないのだろうけれど、たまにちょっと顔をうずめたくなるような気分だ。

まあ、ずっとこのままでいられないことはわかっているのだ。
そのうち、ベッドから足をはみ出させた飼い主を発見した犬が「それはなにかあたらしいあそびですか」などと言いながら、足の裏をべろべろしに来るだろう。
残念ながら、それに気づかずじっとしていられるほど鈍感ではないのだ。

夜明けまではまだ少し時間がある。さて、何をしよう。


キリンジ - エイリアンズ