CITRON.

のん気で内気で移り気で。

略してA.B.C.

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まだ5月、そして、まだ午前中なのに暑い。
歩いているだけで汗がたらたらと流れてくる。

繁華街の真ん中に、箱庭のような公園がある。
公園といっても、大半は芝生になっていて、遊具の類はあまりない。ボール遊びをする親子がいたり、寝転がって本を読む人がいたり、小さなテントのようなものを設置してうたた寝する人がいたり、利用者たちはこの芝生を楽しむために来ているようだ。

芝生の緑と空の青さが、気恥ずかしいほどいいバランスで視界に入る。
王道の強さ、というようなものを感じつつ、目を細めて緑と青を眺める。
こういう状況を、清々しいというのだろうか。暑いけど。

ふと、耳に、こんな呪文が聞こえてくる。

「ヨクヒエタビールゴザイマスヨー」

呪文が聞こえてきたほうを振り返ると、ビール用のサーバーを備えた屋台がある。その中には、笑顔の可愛いお姉さんがいて、ふたたび呪文を唱える。

「よく冷えたビールございますよー」

しっかりと呪文にかかってしまった僕は、ふらふらとその屋台に引き寄せられていったのであった。
こんな天気で、こんな緑で、こんな青なのだ。
魔法にかかってもしかたがないではないか。

ビールは600円であった。
先日のオクトーバー・フェストで飲んだビールの半額である。つい、「お買い得かも」と思ってしまったが、これが居酒屋だったら文句を言っている金額かもしれない。この暑さが、僕の意思決定に関する回路をダメにしたのだろうか。

もう、今さら書かなくてもいいような気もするが、ビールはたいへん美味かった。飲んでいるそばから汗になって蒸発しているのではというくらい、するすると抵抗なくビールは体の中に入っていき、どこにも残らなかった。

ビールを飲みながら、ふと、「あおぞらビールクラブ」という言葉を思いついた。今日のように、青空の下でビールを飲むのが好きな人たちのことだ。僕は、こういうゆるいネーミングをするのがわりと好きなのである。ちなみに最近の作品には、意識が高くも低くもない状態を指す「意識ぬるい系」というのがある。
……まあ、下手の横好きというかなんというか、才気あふれるネーミングではないことは認める。ささやかな趣味なので、そこはそっとしておいていただきたい。「あおぞらビールクラブ」は、名前としての全体的なクオリティはやや残念な感じではあるのだが、略称が「A.B.C.」になるのがなんとなく捨てがたい。本当に、正真正銘、どうでもいい話だ。
ネーミングについての好みをもう少し書くと、かっこよすぎず、愛嬌があり、どこかしらにすき、というか突っ込む余地がある、というのが理想だ。そういう意味では、桜上水にある「メガネコーヒー」というカフェのネーミングは秀逸だなあ、と思う。

とかなんとか、くだらないことを考えながら飲むビールは美味い。

あおぞらビールクラブ。略称はA.B.C.。
活動内容は、よく晴れた青空の下で、美味しくビールを飲むこと。会員たちは空の下でつながっているので、特に集まる必要はない。
会員は随時募集中。
……って、何言ってんだか(笑)。

そんなようなことを考えながら、最後のひとくちを飲み終わる。
あっというまに、僕の600円は青空の下に蒸発したのであった。

繁華街の真ん中に箱庭みたいな芝生があって、そこでビールが飲めるなら。青空の下でシャッターを押せば、たいていのことはうまくいく。#池袋 #南池袋公園 #racinesfarmtopark #racines #ぼっち #青空 #ビール #あおぞらビールクラブ