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CITRON.

のん気で内気で移り気で。

ウサギ蒸発。

「有効成分最大量」みたいな店頭の売り文句にひかれ、ウキウキと買ってしまった目薬の箱を開けてみたら、通常よりも大きな容器がごろりと出てきたのであった。

「有効成分最大量」とは、つまりは目薬の効き目成分が濃い、という意味合いを期待していたのだ。
実はそうではなく、今回買ったこれは、単に目薬の量が多いお徳用、ということなのだろうか。購入価格から推測すると、効き目成分が濃くて量まで多い、ということは考えにくいような気はするが、何かのキャンペーンで破格の安さで売っていたという可能性も捨てきれない。

目薬の箱にも説明書にも、僕の疑問を解決できるような情報は載っていない。まあ、いつも買っている価格帯のもので量が多いということは、少なくとも損はしていないと思うのだが、ちょっと困惑気味の昼下がりなのであった。

ところで、僕は目薬のしすぎで目が充血するくらいのメグスリストなのである。
メグスリストとは目薬常用者を意味する言葉で、今考えてみた。とはいえわりと誰でも思いつきそうな構造の言葉なので、どこかですでに使われているような気はする。

眼病治療用の目薬の副作用で、僕の目はおおむねいつも充血しており、ビギナー(ビギナー?)の方に驚かれることが多い。
驚かれるたびにくどくど説明するのもいいのだが、要は病気の説明なのでたいして面白くもない話に時間を割くことになる。それが時間のムダとまではいわないが、手短に済ませられるならば済ましてしまいたい作業であるのは間違いない。
それならばいっそ、

「実は僕、ウサギの生まれ変わりなんだぴょん」

と言ってみるのはどうだろう、と、以前やっていたブログに書いたことがある。

bloodshotだぴょん。 - 平熱通信

……書いた本人として久々に読み返してみるとあまりの内容のなさになんともいえない伏し目がちな気持ちになるが、今ここでいいたいのはそういうことではない。
実は、先日のある飲み会で、上記の案を実践してみたのである。
宴もたけなわというタイミングで、アルコールの影響か、いつもより二割増しくらいで充血している我が眼球について、

「なんかもんのすごい目が赤いんだけど、大丈夫なの?」

というクエスチョンが投げかけられたのだ。
そこで先ほどのセリフを言い放ってみたのだが、結果はあまりにも想定外のものであった。
緊張のためか声が予想外に小さくなり、質問してきた人に、

「え、ウサギがどうしたって?」

と真っ正面から聞き返されたのだ。
これはなかなか恥ずかしい事態である。この手の冗談を聞き返されたり、意味の説明を求められるのはかなり高レベルの恥ずかしいことなのだ。「恥ずかしさのあまり死を決意する」を1位だと仮定すると、3位から5位くらいに該当するのではないだろうか。日頃、くだらない冗談など言わない人にはなかなかわかってもらえない類の話だが、これは本当の話なのである。あなたのまわりに原因不明の不登校や出社拒否をしている人がいたら、ちょっとこの線を疑ってみてもいいかもしれない。

この恥ずかしい状況に際して僕はどうしたか。
ほとんど反射的に、

「言ってませんウサギなんて」

とウソをついてしまい、その上、

「ビール頼む人いますかー」

などと大きめの声で周囲に呼びかけ、ウサギ問題をうやむやにしてしまったのだ。
作戦の失敗は大変残念なことであったが、こんなことが原因で会社に行けなくなるわけにはいかないのである。

すべては飲み会での話である。そこにいたのは全員酔っぱらいだ。
あの時、一瞬あらわれたウサギがその後どうなったのか、もう誰にもわからない。