読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

CITRON.

のん気で内気で移り気で。

雨の日の過ごし方(オトナ編)。

『雨の日の猫はとことん眠い』という言葉があって、ある意味で僕の座右の銘のようなものになっている。
これはそもそも、大昔に愛読していた本のタイトルなのだが、その言葉自体をものすごく気に入ってしまい、雨が降るたびに思い出してしまうのだ。

雨の日の猫がとことん眠いのであれば、人間だってそうだろうというのが僕の持論である。
猫から跳躍力と俊敏さと愛くるしさと肉球と体毛を奪った状態の生物が人間とほぼ同義といっていい。これは周知の事実というか暗黙の了解というか、今さら言うまでもないことだ。
ということは、猫が眠くなる状況ならば人間だって眠いのではないだろうか。いや、現に、朝から冷たい雨の降る今日、やたらと眠くてしょうがないのだ。

今日がたまたま休日だからよかったものの、これが平日だとけっこうやっかいなことになる。平日の日中は会社で仕事をしないといけないわけだが、そういうこちらの事情などいっさいお構いなしに睡魔はやってくるものだ。
仕事中はできれば眠らずに過ごしたいので、それなりの眠気対策は用意しているのだが、

・筆記用具の先のとがったところで手の甲をちくちくする。
・用もないのに誰かに話しかける。
・やたらとガムをかむ。
・やたらとコーヒーを飲む。
・やたらとトイレに行く(これはコーヒーの副作用ともいえる)。

……どれも効果はそれなりで、それなりということはつまり、眠気のレベルが上がるとあまり効き目がないのである。上記すべて、身体のどこかを動かしたり刺激することによって眠気を退散させようとするものなのだが、あまりにも強烈に眠いときには、このような些細な刺激など意味をなさず、いわゆる「何をしても眠い」という状態になる。つまり、母親からご飯を食べさせてもらいながら寝てしまう赤ん坊と同じ状態になりかねない。
仕事中に居眠りすることはほとんどない(と思っている)僕ですら、まれにパソコンで書類を書いている最中に一瞬の睡魔にやられてしまい、ふと気づくと、
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
……というように、書類の文面が断末魔の叫び声を上げることがあるのだ。

ということで最近では、予防よりも、事故後の被害を最小限にする方法を考えている。そのひとつとして、今年から、出勤する日が雨だった場合、まぶたに黒目を記入することにした。これにより、睡魔にやられて目を閉じてしまったとしても、マジックで書き込まれた黒目のおかげで(ごく短時間ではあるが)周囲の目をあざむくことができるのだ。
その際、気を付けておきたいのは「決して白目を描かないこと」だ。
この作戦は、「人はそれほど他人の顔に注目していない」という心理を巧みに利用したものなのだ。「ちょっと前髪を切ってみた」、「今日からメガネが新しい」というような、本人としてはそれなりの変化が顔面に起きているにもかかわらず、周囲の人間に気づかれなかった、ということはよくある事だろう。見ていないわけではないが、意識的に注目していないものについては頭に残らないことが多いものなのである。
なので、仮にウトウトして目を閉じてしまったとしても、目の中央部分がなんとなく黒ければ意外と違和感は持たれないのだ。こういう場合、目を閉じてしまうのはそれほど長い時間ではないことが多い。その間、不信感を抱かせなければ充分に体勢を建て直すチャンスはある。
ごく短時間、カモフラージュできればいいという意味で、白目部分を描くのは不要、というよりむしろ逆効果になるといっていい。簡単に白目といっても、違和感がないような色合いの白を用意するのはかなり困難だろう。リアルさを追求してまぶたを白く塗ったとしても、ウトウトしたときに「不自然に顔に白い部分のある人」が出現するのがオチなのである。不自然というのはつまりは目立つということだから、作戦は大失敗といっていい。
ところで、ここまでの文章は「ウトウトするのは短時間」という前提の上で書かれている。職場での居眠りで熟睡してしまうような人には適合しない作戦だ。言うまでもなく、そういう人には別の作戦が必要、というか、可能であれば眠れる状況を作ったほうがいいと個人的には思う。

この文章を書き始めて、ここまでで6時間が経過している。
ベッドの中でウトウトしている合間に書いているので、なかなかはかどらないのである。まあ、はかどらないのはいいとして、寝ぼけて書いていると思われる部分もちょこちょこあるようで、今回はいつにもましてウソ含有率が高いようだ。

こういう日はひたすらうつらうつらと過ごすに限る。
枕元には先日ブック・オフで買ったマンガが三冊と、これを書いているキーボード。
ベッドの中でひたすらウトウトと過ごし、たまに隠してあるビールを飲む。ベッドの中での飲食は我が家では軽犯罪なのだが、長年の試行錯誤の結果、缶ビールを隠すための死角を発見したのである。飲んでいる瞬間さえ見られなければ、バレることはない。
枕の下には、非常食としてミックス・ナッツも隠してある。
だらしなく寝て過ごす為に万全の準備をする。これが大人のふるまいというものなのだ。