CITRON.

のん気で内気で移り気で。

禁断の黒メガネ。

ついに、いわゆる遠近両用メガネを買ってしまった。
今まで、主治医の言いつけ通り、見たい距離にあわせてメガネを替える、という生活をしていたのだが、これはやはり不便な事が多いのである。手元の資料を見ながらパソコンを操作する時に、資料用とパソコン用でメガネを替えるというのはやはり面倒なのだ。   
  
遠近両用メガネのレンズの仕組みは、メガネをかけた状態でいうと、レンズの上の方(額に近い方)に遠距離用に調整された度が入り、そのまま下に向かって近距離用の度に変化していく、というもののようだ。僕がメガネを買ったお店では、こういうレンズを「遠近両用レンズ」ではなく「累進レンズ」と呼んでいる。「累進」の意味を「だんだん変わっていくこと」というように考えると、ああなるほどね、という気分になる。

レンズの上方から下方に向かって連続してピントの合う距離が変わっていくということは、見たいものに合わせてレンズを使う部分を変えれば、様々な距離に対応できる、ということだ。遠くを見たいときは、アゴを引いてレンズの上部を通して対象を見るようにする。対象が近ければ、アゴを出すようにしてレンズ下部から見るようにする。  

自分が見たいものがレンズのどの部分を使うと一番よく見えるのか、アゴを引いたり出したりしながら調節することになるわけだが、これはできるだけゆっくりやったほうがいい。あまり素早くアゴをクイクイ上下すると、不良学生関係の方たちがいうところの「メンチを切る」という動作に近い動きになってしまい、例えば街中などで思わぬトラブルに巻き込まれる可能性がある。 

ちなみに、「うまく使いこなせないと頭が痛くなる可能性が高い」ということで、僕の主治医はあまりこのレンズを勧めていない(あくまで、僕が累進レンズを使った場合、ということです)。つまりはうまく使いこなせばいいわけだが、不器用さにかけては東京23区でベストエイトの実力と言われた僕のことである。このメガネを使い続けられるかどうか、今のところよくわからないが、まあ、いいことばかりじゃありませんよ、ということだ。  

 

さて。  

レンズの場所によってピントの合う距離が違う、という性質上、累進レンズは大きい方が使いやすい。レンズが小さいと、些細な視点の変化でピントの合う距離が変わりやすいからだ。  

そこで、「レンズが大きめ」というのを第一条件にしてメガネ・フレームを選んでみたのだが、このフレームについて、家族の評判があまりよろしくないのだ。    

新しいフレームについての娘の感想は、「ギリギリでアウト」というものであった。そのアウト部分についての説明を聞いてみると、僕がこのフレームについて唯一気になっていたポイントとぴったり一致していたので悔しいが何も言い返せない。  

あんまりだと思ったのが奥さんの感想で、「く、黒いフレームだね」というものだ。これは感想というより情景描写に近いのではないだろうか。冒頭、少しどもっているのも気になる。  

つまりこれは、できれば感想を言いたくない、ということなのだろうか。それでもなお何か言わないといけないという状況で、あわてた結果があのどもった冒頭部分なのだろうか。  

そのへんのモヤモヤした部分を、解明したいような、そっとしておいたほうがいいような、微妙な気持ちなのである。