CITRON.

のん気で内気で移り気で。

世界は三段階。

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先月末、常用するメガネをまた増やしてしまった。これで三つ目になる(ちなみにすべて度数は違う)。
自分の病気の事情でそうしているので誰に文句がいえるわけでもないのだが、それ以来、後頭部の頭痛と車酔いに似た不快感に悩まされている。新しいメガネを作ると、慣れるまでそういう症状が出ることがあるが、それがなかなか治まらないのだ。度数の違うメガネを(それも三つも)ちょいちょい使い分ける、という運用にも原因があるのかもしれない。

現在使っている眼鏡の役割とニックネームは以下の通りである。
・外を歩く、人と話す、テレビや映画を観る、というような、中遠距離用の「遠山くん」
・仕事で使うノートパソコンや机上のものがだいたい見える「近田くん」
・「近田くん」よりも近く、つまり文庫本や携帯の画面、自宅のパソコンを使うのに都合のいい「頼近(よりちか)くん」

たとえば会社では「近田くん」を使うことが多いのだが、これをかけたままで誰かと会話をした場合、相手の顔の表情や身振りがわかるのはおおむね机一マス分までである。つまり、正面や隣、左右の斜め前の席に座っている人くらいまでならわりとよく見えるのだが、それよりも遠くになるともうダメだ。だいたいの輪郭はわかるものの、表情や仕草はにじんだようにぼやーんとしか見えない。
余談になるが、電話での会話のように、そもそも相手の顔が見えないのが前提ならともかく、通常の会話で相手の表情や仕草が見えないのはけっこう不安になるものだ。言葉と表情と体の動きから作られるニュアンスのようなものがつかめないので、相手の発するメッセージを(それが善意にしろ悪意にしろ)100パーセント受け取れていないような気になるのだ。
とは言いつつも、世の中の目の悪い人が、みんながみんな僕と同じことを考えているわけではないとは思う。僕のコミュニケーション能力があまりにも低いが故に、手に入りうる情報はすべて収集できないと不安になってしまうのかもしれない。つまり、言葉と声色だけでうまく相手の意図がわかるほど会話のスキルが高くない、という可能性はありそうだ(……しまった。思いついたことをつらつらと気ままに書いていたら、思わぬところで自分の弱点と対面してしまった)。

ということで、身勝手なお願いではあるのだが、僕の周辺の方々には、激やせや激太り、服装やヘアースタイルの極端な変化というような、輪郭が変わりそうな行為はなるべく避けていただけると大変助かるのである。ただでさえ頼りない視覚からの情報が混乱するようなことは極力回避したいのだ。というか、そういうお願いをする前に、相手の距離に応じてこちら側がメガネを替えればいいのだが、人とのコミュニケーションは意外と突然はじまったりするのでメガネ・チェンジが間に合わなかったり、チェンジをあまり頻繁に行うと後にやってくる頭痛がしつこかったりして、僕としてもなかなか悩ましいのである。

そういえば、最近買ったインスタントカメラ(いわゆる「チェキ」のフィルムを使って撮影するカメラ)が、今の僕の目と似たような仕様なのだ。撮りたいものの距離に応じて、レンズのところにある距離スイッチを切り替えて撮影する。スイッチは三段階あって、その内容は「近い」、「ふつう」、「遠い」だ。
世界中の被写体をざっくりと三段階で把握するというのはなんとも大ざっぱで、撮影された写真も、ピントが合ってるんだか合ってないんだかよくわからないけどまあ細かいことは気にするな、というような仕上がりになる。それがある種の「味」にはなっているようで、ためしに撮った写真をInstagramにアップしてみたら、数人の知らない人から褒められてしまった。Instagramで褒められるのは必ずしも写真の力によるものではないのだろうけど(実際、それほどの写真ではないように思う)、思いもよらないことが起こるものである。

頭痛に悩まされたり知らない人から褒められたり、一勝一敗というか捨てる神あれば拾う神ありというか、良くも悪くも思い通りに行かない日々なのである。

なんというか、妙に雰囲気が出てしまうのがインスタントカメラのすごいところ。#池袋 #サクラカフェ #sakuracafe #lomoinstant #lomoinstantautomat